本シリーズでは、ブルーベリーの栽培に興味がある初心者の方向けに、ブルーベリーについての知識から本格的な育て方までを解説します。
前半は知識編・後半は実践栽培編としてお楽しみください。
今回の記事は前半の知識編となります。後半の実践栽培編をお探しの方はこちら。
ブルーベリーとは
一般的なベリー系の植物(イチゴ・ラブベリーなど)はバラ科に属しますが、ブルーベリーはツツジ科スノキ属シアノコカス節に分類されます。
春にはスズランの様な可愛らしい白い花を咲かせ、初夏から青い実をたくさん実らせます。
その姿から、ブルーベリーの花言葉は「実りある人生」です。
また、「思いやり」・「好意」・「知性」の意味も持ちます。
ブルーベリーの歴史
ブルーベリーの歴史は比較的浅く、日本でメジャーになったのも20世紀後半頃からです。
生食だけでなく、ブルーベリージャムやソース・ドライフルーツ・サプリメントなど身近に食べられるので、意外に感じられるかもしれません。
まずはブルーベリーのルーツ・日本を含む世界に広まったきっかけなどを紹介します。
ブルーベリーの世界史
ブルーベリーは世界各地に野生種が自生しており、特に17世紀ごろには北米大陸で食料または薬として用いられていました。
その後ヨーロッパからアメリカに移住してきた人達が増えてきました。
今のアメリカ人の祖先の多くは400年ほど前に、イギリスを中心としたヨーロッパから移住してきた人びと。
最初の移住者102人がたどりついたのは、アメリカ北東部、現在のマサチューセッツ州のプリマスです。
1620年12月、ちょうど真冬でした。
たくわえがつきると、多くの人たちが、飢えや壊血病に苦しみ、半数以上の人が亡くなりました。
そんなようすをみて、もともとそこに暮らしていた先住民であるネイティブアメリカンたちが、干したブルーベリーの入ったスープなどをくれ、ブルーベリーの食べ方や貯蔵方法を伝え、移住者たちは、かろうじて生きのびることができました。
その出来事によりブルーベリーのことを「命の恩人」と呼んで、アメリカでは特別な思いをよせる果物となっています。
この頃に保存食としてドライフルーツにしたり、ジャムにしたりしていました。
1860年代には北米大陸で野生種の栽培化が始まっていましたが、あまり研究が進まず成功例は少なかったようです。
その後ようやく改良され、果樹としてのブルーベリーが誕生したのは1920年頃のアメリカでした。
現在全世界で栽培されているブルーベリーの曽祖父、祖母にあたる品種たちです。
1950年代に入り、ブルーベリーの品種改良が進み、ビッグセブン(七大品種)が誕生し、今では世界各国(メキシコ・チリ・カナダ・ヨーロッパ・ニュージーランドなど)に広まっていきました。
ブルーベリーの日本史
ブルーベリーが日本に初めて伝わったのは1951(昭和26)年、農林省北海道農試(当時)により、アメリカからノーザン・ハイブッシュ系ブルーベリーが導入されましたが、普及はしませんでした。
その後20年を経て、本格的な栽培と研究が開始されたのは、1971年(昭和46年)、この年に、東京農工大学から長野県須坂市の「長野県果樹試験場」に穂木(ほぎ)が導入され試験栽培が始まりました。
ノーザン・ハイブッシュブルーベリーの、事実上の栽培開始元年にあたります。
当時、ブルーベリーの研究は「長野県果樹試験場」および東京農工大学が、試作は、長野県北部の地元の「伊藤ブルーベリー農園」が、そして、苗の増殖は「小町園」が行いました。
東京都府中市にある東京農工大学農学部は、日本のブルーベリー研究発祥の地です。
それは、故・岩垣教授が、1965年(昭和40年)からラビットアイ系品種の試験栽培を始めたことによります。
それから3年後の1968年の3月、岩垣教授に依頼された東京農工大学出身で小平市在住の島村速雄氏がブルーベリー栽培を始めました。
これが、ラビットアイ系品種による、民間でのブルーベリー経済栽培の始まりであり、日本初のブルーベリー園が東京都小平市に誕生することになりました。
その後1980年代に、アメリカで温暖な地でも栽培できる、サザン・ハイブッシュ・ブルーベリー品種の改良が進み、日本でのブルーベリー栽培は、関西、九州、沖縄地方まで広がっています。
現在、果実またはジャムやケーキ・クッキーとして店頭に並び始め、機能性食品としても認知度が高まっています。
1990(平成2)年にはブルーベリーの作付面積が180ヘクタールだったところ、2015(平成27)年には1,100ヘクタールと、6倍に広がりました。
国内では、
長野県
東京都
茨城県
群馬県
などが盛んです。
ガーデニングブームの追い風もあり、今ではブルーベリーは自家栽培としてもすっかり定着しました。
ブルーベリーの種類-最新品種-
現在、日本で栽培種として流通しているブルーベリーの品種は100種類以上です。
大きく分けると、「ノーザン・ハイブッシュ系」・「サザン・ハイブッシュ系」・「ラビットアイ系」の3つに分けられます。
それぞれの特徴を紹介します。
ノーザン・ハイブッシュ系
「ノーザン・ハイブッシュ系ブルーベリー」は寒さに強く、マイナス20度にも耐えられます。
一方で、暑さにはやや弱い特徴を持っています。
果皮が薄くジューシー、果実は大きく、500円玉大の大きさになることもあります。
おすすめの品種(ビッグセブン)は以下です。
ブルーレイ:果実は大粒で酸味と甘味のバランスがGOOD!特に人気が高い。
ブルークロップ :風味がよく、果肉の締りが良い。ノーザン・ハイブッシュ系の代表品種
バークレイ:風味がよく、酸味が少なめで食べやすい。
ハーバート:果皮が薄く、果肉が非常に柔らかい。
コビル:酸味は強いが風味は非常に良い。
アーリーブルー:早生品種で、酸味は弱いが、風味に優れている。
コリンズ:甘みと酸味の調和がとれ風味が優れている。
「ノーザン・ハイブッシュ系ブルーベリー」は古くから愛され続けた優良な系統です。
サザン・ハイブッシュ系
「サザン・ハイブッシュ系ブルーベリー」は1980年代「ノーザン・ハイブッシュ系」を暖地向きに品種改良したものです。
全体的に酸味が少なく、生食でも加熱加工してもおいしいです。
収穫(完熟期)の見極めをそれほど気にしなくて良いのも魅力です。
おすすめの品種は以下です。
オニール:甘みが強く、ジューシー。
ミスティ:酸味は抑えめで、芳香が独特。栽培の難易度は高い。
サンシャインブルー:自家受粉できるため、1本でも育てられる。実が高品質。
シャープブルー:甘さが目立つ。成長しやすい。
「サザン・ハイブッシュ系ブルーベリー」は関東地方から沖縄まで栽培可能です。
ラビットアイ系
「ラビットアイ系ブルーベリー」のルーツは、アメリカの温暖な地域ジョージア州とフロリダ州周辺です。
全体的に丈夫で育てやすく、乾燥や高温にも強いです。
特に生食に向いています。
おすすめの品種は以下です。
ブライトウェル:中粒サイズがたくさん収穫できる。
オンズロー:種や皮の食感が残りにくい。
オースチン:歯ごたえがある。
ブルーシャワー:大粒で美味しく、よく育つ。
「ラビットアイ系ブルーベリー」は栽培地域に関わらず、収穫量が多い特徴を持っています。
ブルーベリーの効果・効能
ブルーベリーは「目にいい」というイメージですよね。
そう言われるようになったきっかけは、第二次世界大戦中のイギリス空軍のパイロット、(キャッツアイ)・撃墜王と呼ばれた、カニンガム中佐のエピソードです。
彼はブルーベリージャムが大好物で、毎日のように食べていました。
夜間戦闘に出撃したとき「薄明かりの中でも物がはっきり見えた!」と言っていたことから研究が始まりました。
その後、ブルーベリーの成分が目の疲れを和らげる・緑内障や白内障の予防に効くことが分かってきました。
また、抗酸化作用が高く、がん予防・免疫機能の低下防止・美肌効果も期待できます。
ブルーベリーは目だけではなく健康・美容にもおすすめの食べ物なのです。
[ブルーベリーに含まれる栄養]
ブルーベリー100gあたりの栄養素を紹介します。
エネルギー:49kcal
食物繊維:3.3g
タンパク質:0.5g
ビタミンE:1.7mg
ビタミンC:9mg
カリウム:70mg
カルシウム:8mg
マグネシウム:5mg
脂質:0.1g
鉄分:0.2mg
糖質:9.6g
注目すべき点は、食物繊維です。
イチゴやバナナなど他の果物に比べて豊富な食物繊維が含まれています。
ブルーベリーは目にいいとのイメージがありますが、実はこの食物繊維の豊富さが近年注目を集めています。
食物繊維には腸内環境を整える役割があり、便秘の予防・整腸効果・生活習慣病の予防・改善にも役立ちます。
不足しがちな鉄分も入っていながら糖質も少ないので、美容・健康が気になる女性におすすめできます。
ブルーベリーが目にいいと言われる理由は?
ブルーベリーは青紫色の果実ですが、この色は目に良いと言われる成分「アントシアニン」の色素です。
私達人間は、目の網膜にある神経伝達物質「ロドプシン」が分解・再合成をすることで物を見ています。
しかし、目を使いすぎると「ロドプシン」の再合成がうまく行かず、目がかすんだりぼやけたりします。
ブルーベリーに含まれている「アントシアニン」は、神経伝達物質「ロドプシン」の再合成を促す働きを持っています。
加えて、「ロドプシン」の原料となるビタミンAも豊富に含まれています。
そのためブルーベリーは眼精疲労を始め白内障予防など目の病気に効果的なのです。
ブルーベリーを食べすぎるとどうなるの?
ブルーベリーはおいしく、目にもいいのでつい食べすぎてしまう人も多いのではないでしょうか?
ちなみに、アントシアニンの量から考えると、一日の適量は60g〜300gと言われています。
ブルーベリーは1粒約2gなので、60gでも30粒程度です。
ただし、食べ過ぎると、赤ワインを飲み過ぎたときと同じく、食物繊維が大量に含まれているため、「アントシアニン」の色素が消化されずに黒い便が排出されます。
それだけアントシアニンが多いということです。
ブルーベリーを犬に食べさせても大丈夫?
「犬にぶどうを与えてはいけない」説は聞いたことがあるでしょうか?
そのため、ブルーベリーも犬に良くないのではないかと心配になる方もいます。
ブルーベリーの見た目はぶどうに似ていますが、犬に食べさせても問題ありません。
ぶどうはブドウ科の植物、ブルーベリーはツツジ科の植物のため、まったくの別物です。
愛犬が中毒症状を起こす成分は入っていません。
ブルーベリーは小粒で甘く、柔らかいので小型犬でも食べやすいでしょう。
ただ、人間と同じで、食べさせ過ぎには注意しましょう。
飼い主さんが適量(食事量の10%程度)を判断し、ブルーベリーを与えましょう。
ブルーベリーについてのまとめ
ブルーベリーの歴史から品種、栄養成分や効能についての知識を解説しました。
後半では具体的なブルーベリーの育て方について解説していきます。(続きはこちらから)
※ブルーベリーの効能についてより詳しい解説をお探しの方は、次のオックスフォード大学出版の論文記事が大変役に立つと思いますので参考にしてみてください。